写真集『残りの花』 中居裕恭写真集 ワイズ出版
前回の投稿からだいぶ間が空いてしまいました。
前回の記事は、仕事上の後輩から2冊の写真集をいただいたお話し。
そして、そのうちの一冊をご紹介。
本日は、その続きでありまして、いただいたもう一冊の写真集が、
『残りの花―中居裕恭写真集 (ワイズ出版写真叢書)』であります。
写真集を開くと、とても懐かしいモノクロ写真。
永遠に止まった記憶。
この写真集の作者である中居裕恭氏は、青森の八戸生まれ。
そして本写真集は、その生まれ故郷である八戸や、同じ青森県の六ヶ所村、同じ東北の岩手県などで撮られたものをまとめたもの。
写真がいつ撮影されたものなのか、詳細は掲載されていませんが、8ページの写真に写る電気屋さんの看板には、「ポケットベル代理店」とあるから、おそらく何年前のものか、ぼくらおじさんはよくわかると思います。
「ポケベル」という言葉を聞いただけで、ぱらぱらと記憶が蘇ってくるように、写真集をめくっていくと、同じようにぱらぱらと記憶が巡る。
個人的に好きな写真集は、こんな感じで記憶がじゅんぐりにやってくることが多く、そんなときは気持ちが高揚してくる。
やってくる記憶はとても個人的なもので、めくっている写真とは全く関係ないものなのだけど、いつかそこかしこにいた自分の残像。
そしていつしか、写真集の写真の中に溶け込んでいく。
いい写真集だなぁ。
カメラを持つ人の気持ちが伝わってくる。
そして、自分も同じようにシャッターを押しているような錯覚。
つくづく、いい写真集だなぁ。
写真集と一緒に、ポストカードも入っていました。
裏を見ると、追悼写真展のお知らせが・・・。
この写真では見にくいので、写真展のお知らせを書いておきます。
中居裕恭 追悼写真展
【 北斗の街 - 遡上の光景 】
会期 平成28年4月5日(火)~9月25日(日) 9時~17時(入館は16時30分まで)
会場 寺山修司記念館エキジビットホール/短歌の径(こみち)
青森県三沢市大字三沢字淋代平116-2955
お問合せ 0176-59-3434
入場料 一般個人530円 高校生・大学生100円 小中学生50円
青森県の開催と言うことで、行ける方は限られてしまうかもしれませんが、もし青森県に行かれる際は、寄ってみていただきたいです。
『1978 新宿ゲイ メモリア グラフィカ no.4』
この間、仕事関連の後輩さんから2冊の写真集をいただきました。
そのうちの一冊がこちらであります。
タイトルは、『1978新宿ゲイ』。
後輩さんはとてもキュートな娘なのでありまして、同業者(鍼灸師)の中では珍しいくらいの感じです。そんな彼女のお父さんはカメラマンをしているということを、以前から聞いていました。
どんなカメラマンであるか、それ以上のことは聞いていなかったのですが、最近お父さんが亡くなられたと言うことで、写真好きな私にも写真を見てほしいと、お父さんの写真集をいただき、そこで初めてお父さんの生き様を、その写真を通して知ることとなりました。
最初に後輩から「父はカメラマンをしてるんですよ~」と聞いたとき、“カメラマン”という言葉の響きから、てっきりコマーシャル業界的なカメラマンを想像していたのですが、写真集を見させていただくと、いやいやそんな柔なものではなく、これはまさしく“写真家”ではないか!
後輩のお父さんのお名前は、中居裕恭氏。
かの森山大道氏のお弟子さんだったそうなのです。
森山大道氏と言えば、荒々しい粒子のモノクロ写真でその名を馳せ、寺山修司とコラボしたり、現在も精力的に活動している私の憧れのカメラマン。
後輩のお父さんは、そんな巨匠のお弟子さんだったとは!
いただいたこの写真集をめくってみると、夜の異界を切り抜く独特の世界観。
こういうドギツイ写真、好きだなぁ。
恥ずかしながら、私もかつてはこんな風に写真を撮って生計を立てたいなぁと思ったときもありました。
しかし、そんな甘い世界ではないことは百も承知。
結局そちらの世界に飛び込む勇気もなく、大事にしていたフィルムカメラはあっさりと空き巣に盗まれ、その夢は強制終了ということに・・・。
それからだいぶ月日が経ちまして、こういったほめ言葉としてのドギツイ写真を見る機会もなくなっていましたが、改めてこの写真集を見ると、日本の社会を鋭く、そしてありのままに切り抜くことで社会を挑発することの重要性を感じました。そして、写真家として生きる覚悟というものは、とてつもないパワーが必要なのだと感じました。
とにかく異界。すごい写真集であります。
※ 今回、後輩の娘さんから、ブログに書くことを 承諾いただきました。お父様の記憶がずっと語りつがれていくようにと言う思いのご厚意であります。もう一冊いただいておりますので、そちらも直に掲載しようかと思います。
- 作者: 中居裕恭,グラフィカ編集室
- 出版社/メーカー: グラフィカ編集室
- 発売日: 2008/09/06
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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花束を君に
休みをいただき、箱根の実家へ帰省。
「箱根ガラスの森美術館」の招待券があると言うことで、行ってきました。
開館20周年ということですが、まだ一回も行ったことがなかったので、これは良いかなと思いまして、足を運びました。
あまり大きい施設ではありませんが、美術館の庭にはたくさんのお花が咲いており、なんだか夢のような。
ちょうど嫁さんの誕生日が近いので、花束を君にプレゼントするような気持ちで。
【撮影後記・雑記】
お花の写真って、難しい。その場では何となく単調になってしまう。今はその単調さを撮った後に調整できるけど、フィルム時代はどうやっていたのだろう。フィルター使ったり、工夫をしていたのかなぁ。今はそんなことを考えずに出来るから、幅が拡がってお花を撮るのも楽しくなりますね。
【撮影機材】
OLYMPUS OM-D E-M1-M1
OLYMPUS M.ZUIKO ED 12-40mmF2.8PRO
苔生すお地蔵さん
実家に急用があり、お休みをいただいて帰省しました。
実家は箱根なので、そんなに遠くありません。しかしかといって近いわけでもないので、いつも慌ただしく仕事の後夜出て一泊し、次の日は半日いろいろ用事を済ませるといった感じで、案外時間がありません。
ということで、せっかく帰省したので、ご先祖様にご挨拶。
お墓参りに行ってきました。
実家のお墓があるお寺は、別に古刹で有名と言うこともなく、田舎にある普通の地元のお寺さんであります。
よく小さい頃は除夜の鐘を叩きに来たなぁと思いつつ、境内をぶらついてみると、お地蔵さんのコンクリート像がありました。
かなり苔生して、傷んでいる様子。
コンクリート製ですから、何とか時代の何とか調みたいなものではないのですが、それでもこのお地蔵さんの姿は、風雪に耐えて地域を見守ってきた厳かな気配を感じました。
お地蔵さんがお持ちになっている錫杖(しゃくじょう)も、コンクリートがはげ落ちて、中の鉄筋がむき出しに。
文化財にはならないけれど、理を持ったお姿は何かを物語っているのであります。
【撮影後記・雑記】
実家にはいろいろと解決しなければいけない問題もある。それに向き合わなくてはいけないことも。お地蔵さんは、やさしい。そのやさしさで以て見つめなくてはいけないのだけれども。苔生すお地蔵さんのように、堪え忍ぶ勇気が必要なのか。
【撮影機材】
OLYMPUS OM-D E-M1
OLYMPUS M.ZUIKO ED 60mm F2.8 Macro
夕方の光があまりにやさしくて
デジタルカメラの高画素かが進む中で、それとともにレンズの性能もかなり上がってきたと言います。例えば、「開放からキレキレの写りを見せる」というレンズ評は、ほめ言葉。確かにキレキレで高精細な写真を見ると、すごいなぁと感じるのは確かであります。
しかしそんなキレキレの写りばかりを見ていると、なんだか圧倒されて疲れてしまうこともあります。そういったときは、その対極にある、ふわっとした柔らかさが癒やしになる。
RAW現像でやわらかく加工しても良いのだけれど、そうじゃないんだ。シャッターを切った瞬間に感じるあの瞬間に、ふわっとしたのだ。ぼけているというのではなく、やわらかく、ふわっとした感じ。そして、そこにゴーストが入ろうが、何が入ろうが関係ない。自分の心象風景と、カメラが映し出す風景とが重なる瞬間こそが、写真なのだから、それでいいのではないか。
【撮影後記・雑記】
GW最終日。と言っても私は暦通りなので、もうすでにGWは終わっていましたが、ちょっとまだ休みの気分をギリギリまで味わいたくて、写真を撮りに行きました、近所ですけど。
普通に、いつもの標準ズームを付けてぶらぶらしようかと思って出かけたのですが、なんとカメラに付いていたレンズが、キャノンのオールドレンズ。ジャンク品で購入したものですが、あまり使う機会がなかったのであります。そんなレンズが不満を持ったのかどうか分りませんが、なぜかカメラに付いていたのであります・・・。
まぁ、それも良いかと思ってそのまま戻ることなく出かけました。
それがとても良かったのか、なんだかふわっとしたやさしい絵ができました。ゴーストのようなものが出たって、それも味。今の自分の心を現わす味なのであります。
【撮影機材】
OLYMPUS OM-D E-M1
キヤノン 50mm F1.8(1950年代に発売されたLマウントレンズ)
LEICAライカL39レンズ→マイクロフォーサーズマウント アダプター